整体にはさまざまな手法がありますが、特に「ボキボキ整体」と呼ばれるものは、多くの方が気になる施術のひとつではないでしょうか？
「骨を鳴らせばスッキリする」「即効性がある」といったイメージがある一方で、「危険では？」「本当に効果があるの？」と不安に感じる方も多いでしょう。
今回は、18年間、整体師として多くの患者様の体の不調に向き合ってきた経験から、近年話題となっている「ボキボキ整体」について、私の見解を述べさせていただきたいと思います。
ボキボキ整体とは？
ボキボキ整体とは、関節を鳴らす施術のことを指します。特に、カイロプラクティックや一部の整体院で行われることが多く、「矯正」や「骨を正しい位置に戻す」といった整体にはさまざまな手法がありますが、特に「ボキボキ整体」と呼ばれるものは、多くの方が気になる施術のひとつではないでしょうか？
「骨を鳴らせばスッキリする」「即効性がある」といったイメージがある一方で、「危険では？」「本当に効果があるの？」と不安に感じる方も多いでしょう。
しかし、骨が鳴る＝矯正されているわけではありません。 音が鳴るのは関節内の気泡が弾ける現象によるもので、必ずしも身体が正しい状態に戻っているわけではないのです。
施術歴の初期に、私自身もボキボキ整体の技術を学び、実践していた時期がありました。当時は、派手な手技で即効性のある変化を患者様に実感していただけることに、ある種の満足感がありました。確かに施術直後は「体が軽くなった」「痛みが和らいだ」という声を多くいただいていました。
しかし、ある出来事が私の施術方針を大きく変えるきっかけとなりました。30代後半の会社員の方が、ぎっくり腰の痛みを訴えて来院されました。その方は、以前に別の整体院でボキボキ整体を受けた際、一時的に痛みが改善したものの、数日後にはさらに激しい痛みが再発し、日常生活に支障をきたすようになったとのことでした。
この経験は、私に大きな気づきをもたらしました。ボキボキ整体の問題点は、主に以下の3つにあると考えています
ボキボキ整体のリスク
第一に、急激な関節の可動域変化によるリスクです。背骨や関節を強制的に鳴らす手技は、確かに一時的な解放感をもたらしますが、その過程で靭帯や筋肉に過度な負担をかける可能性があります。特に高齢の方や骨粗しょう症のリスクがある方には、重大な事故につながりかねません。
第二に、根本的な原因解決につながらない点です。例えば、デスクワークによる慢性的な肩こりの場合、その原因は日常的な姿勢や生活習慣にあります。ボキボキと関節を鳴らすことで一時的な症状緩和は得られても、原因となる生活習慣や姿勢の改善がなければ、症状は必ず再発します。
第三に、 強い刺激が神経を過敏にし、逆に緊張を生むことがあります。 無理な力を加えることで、関節や靭帯を痛める可能性がある 。 根本的な問題解決にはなっていない。特に、首や腰などの関節に強い力を加えることで、かえって痛みが悪化したり、めまいや頭痛が出るケースもあります。実際に、私の整体院には「他の院でボキボキ整体を受けたら痛くなった…」というお客様が何人も来られています
当店の整体は以下のような考えに基づいて施術を行ってます
まず、初診時には詳細な問診と検査を行い、症状の原因となっている生活習慣や動作パターンを特定します。例えば、先日来院された40代の女性は、スマートフォンの使用時間が長く、常に首を前に出した姿勢をとっていることが、頭痛の原因でした。
施術では、筋肉の緊張を徐々にほぐしながら、本来あるべき関節の可動域を少しずつ回復させていきます。急激な変化を避け、体が適応できるペースで改善を図ることで、持続的な効果が得られます。
確かに、ボキボキ整体には即効性があり、施術直後の変化を実感しやすいという特徴があります。しかし、私たち施術者は、目先の効果だけでなく、患者様の長期的な健康を考える責任があります。
体の不調は、長年かけて積み重なった生活習慣や姿勢の歪みが原因となっていることが多く、それを一朝一夕に解決することは難しいのです。急激な改善を求めるのではなく、段階的なアプローチと適切なセルフケアの組み合わせこそが、真の意味での回復につながると確信しています。
最近では、SNSなどでボキボキ整体の動画が話題を集めることがありますが、それらはともすれば見世物的な要素が強調され、本来の治療の本質から外れているように感じます。整体治療は、派手さではなく、一人一人の体の状態に合わせた丁寧なアプローチが重要なのです。
結論として、ボキボキ整体には一時的な効果はあるものの、そのリスクと短期的な効果に対する依存性を考えると、お勧めできる施術法とは言えません。代わりに、患者様の生活習慣の改善とセルフケアを重視した、穏やかで持続的なアプローチこそが、真の健康回復への道だと考えています。
整体は、決して劇的な変化を求めるものではありません。むしろ、日々の小さな積み重ねが、確実な改善につながるのです。私たち施術者は、その過程に寄り添い、サポートしていく存在でありたいと考えています。