不妊と整体 できることとできないこと

私が整体師として治療院を開業して18年が経ちました。この間、様々な症状を抱えた方々と向き合ってきましたが、近年特に増えているのが不妊に悩む方からのご相談です。整体と不妊治療について、長年の経験から得た知見を皆様と共有させていただきたいと思います。

不妊に悩む方は年々増加しており、整体の施術を求めて来院される方も少なくありません。「整体で妊娠しやすくなるのですか?」と質問されることもありますが、整体は医学的な不妊治療とは異なり、「妊娠を保証するものではない」ことを最初にお伝えしておきます。

では、整体でできることとは何なのか?逆に、整体では対応できない部分はどこなのか?私の18年間の施術経験を交えながら解説していきます。不妊のメディカルノートはこちら

不妊の原因と整体の役割。不妊

まず、最初に申し上げたいのは、整体には限界があるということです。整体だけで不妊が必ず解決するわけではありません。しかし、不妊治療を補完する役割として、また心身の調子を整えるサポート役として、整体には確かな価値があると確信しています。

不妊の原因は一つではなく、医学的には「排卵障害」「卵管因子」「子宮の環境」「男性不妊」「原因不明」など多岐にわたります。そのため、整体だけで妊娠に至ることは難しい場合が多いです。しかし、不妊の背景には「自律神経の乱れ」や「血行不良」「骨盤の歪み」が関与していることがあり、整体がサポートできる部分もあります。

例えば、冷え性が強く、常に手足が冷たいという方は、骨盤内の血流が悪くなり、子宮や卵巣の働きが低下している可能性があります。そうしたケースでは、整体によって骨盤周辺の筋肉を緩め、血流を促すことで、結果的に体の状態が改善し、妊娠しやすい環境に整えるお手伝いができます。

ある日のこと、30代後半の女性が来院されました。3年間の不妊治療の末に心身ともに疲れ果て、藁をも掴む思いで整体を受けることを決意されたそうです。初診時、彼女の体は極度の緊張状態にあり、特に骨盤周りの歪みが顕著でした。不妊治療のストレスで、さらに体が硬直していたのです。

まず私たちができることは、この緊張をほぐすことでした。骨盤の歪みを調整し、自律神経のバランスを整えることで、体の循環を改善していきます。実は、この「循環」というのが非常に重要なポイントなのです。

血液やリンパ液の循環が悪くなると、子宮や卵巣への栄養補給が滞り、ホルモンバランスにも影響を及ぼす可能性があります。また、骨盤の歪みは子宮の位置にも影響を与え、受精や着床の環境に影響を与える可能性があるのです。

しかし、ここで誤解してはいけないのは、整体で骨盤を調整すれば必ず妊娠できるというわけではないということです。不妊には実に様々な要因が絡み合っています。卵子や精子の質、ホルモンバランス、子宮や卵管の状態など、医学的な要因も多くあります。

私の治療院でも、整体と医療機関での不妊治療を並行して受けている方が多くいらっしゃいます。ある40代の患者様は、体外受精に挑戦される前に、まず体調を整えたいということで来院されました。

彼女の場合、デスクワークによる猫背と、それに伴う骨盤の後傾が気になりました。また、仕事のストレスで肩や首に強い張りがあり、不規則な生活により自律神経も乱れていました。

3ヶ月かけて定期的に整体を行い、ご自宅でできるストレッチもお伝えしました。すると、まず睡眠の質が改善し、肩こりも軽減。その後、体外受精に進まれましたが、「体調が良い状態で治療に臨めた」と喜んでいただけました。結果として妊娠には至りませんでしたが、整体によって体調を整えられたことは、治療に向き合う上で大きな支えになったとおっしゃっていました。

このように、整体ができることの一つは、不妊治療に向き合うための心身の準備を整えることです。ストレスで硬くなった体をほぐし、自律神経のバランスを整えることで、より良いコンディションで治療に臨むことができます。

さらに、整体院での施術時間は、患者様にとって心を落ち着かせる貴重な時間にもなります。不妊治療は精神的にも大きな負担がかかるもので、時には涙を流しながら悩みを打ち明けてくださる方もいらっしゃいます。私たち整体師にできることは、その気持ちに寄り添い、体の声に耳を傾けながら、最適なケアを提供することです。

ただし、これは決して医療行為の代替になるものではありません。整体は、あくまでも補完的な役割を果たすものです。不妊に悩む方には、必ず専門医による適切な診断と治療を受けていただくことをお勧めしています。

整体でできないこと

整体は体のバランスを整え、血流や自律神経に働きかけることができますが、「医学的な不妊治療」とは異なります。具体的には、以下のようなことは整体では対応できません。

① 排卵誘発やホルモン治療

排卵しにくい体質の方や、生理不順の方には、ホルモンバランスを整えるための医療的な治療が必要になります。整体はホルモンの分泌を直接コントロールすることはできません。

② 卵管の閉塞や子宮の病気の治療

卵管が詰まっている場合や、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気がある場合は、整体ではなく、病院での治療が必要です。整体は血流を改善するサポートはできますが、医学的な処置には限界があります。

③ 男性不妊の治療

不妊の原因の約半数は男性側にあると言われています。精子の運動率や数に問題がある場合は、整体ではなく専門的な治療が必要です。

整体は、不妊治療の代わりになるものではありませんが、妊娠しやすい体づくりのサポートとして役立つことがあります。骨盤の歪みを整え、血流を促し、自律神経のバランスを整えることで、妊娠に向けた体の土台作りをすることが可能です。

しかし、医学的な不妊治療が必要な場合もあるため、整体だけに頼るのではなく、病院での検査や治療と組み合わせることが大切です。整体を上手に活用しながら、心身ともに健やかな状態を目指していきましょう。

あなたの体が本来持っている力を最大限に引き出し、妊娠しやすい環境を整えるために、整体が少しでもお役に立てれば幸いです。

 

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